FTCでは、小中高大学・海外を中心に金融教育について発信しています。
その中で金融教育や金融リテラシーと聞くと、投資で勝てる能力だと思っている方も少なくないという印象を受けます。
金融庁が掲げている「貯蓄から資産形成へ」というスローガンも、確かにお金を働かせることは人生を豊かにしていくためにも非常に重要なことですが、お金を働かせることだけが金融教育ではありません。
実際に、「資産を増やしたり投資を助長するような発信や、投資で儲けるなどを教えるのは、子供の成長や発達を歪めてしまう」という声もあります。
しかし金融教育は、より良い豊かな人生や社会づくりに向けて、お金が持つ機能や経済の仕組み・働きなどを理解し、一人ひとりが健全にお金と向き合うことによってそれが実現できるようにするためのものです。
そのためにイギリスでは3歳から始める金融教育のワークフレームがあったり、先進国と呼ばれる国では早い段階から金融教育を行っています。
日本の金融教育の遅れはなんとかしなければなりませんが、先進国が行なっている教育に着目すべきだと考えています。
そこで今回取り上げるのは、米国で注目を集めている「Greenlight(グリーンライト)」と呼ばれるお金教育アプリです。
さっそくみていきましょう。
お金教育アプリ
「Greenlight(グリーンライト)」とは
Greenlight(グリーンライト)」とは、親がアプリでお小遣いなどを管理できたり、子供向けのデビットカードを提供するサービスです。
親はGreenlightアプリを通じて、子どもが持つデビットカードにチャージできたり、入金の反映は基本的に即時反映されます。
毎月のお小遣いの金額や日付を自動で設定できたり、キャッシュバックや貯蓄報酬を受け取ることもできます。
また、子どもが持つデビットカードが使えるお店や金額も親が管理できるような仕組みです。
Greenlightはジョージア州アトランタを拠点とし、2017年にサービスを提供してから急成長を遂げ、2020年9月に12億ドルの企業評価価値(バリュエーション)を付けてユニコーン企業になりました。
ユニコーン企業とは、一般的に「評価額が10億ドル(約1040億円)を超える未上場のスタートアップ企業」と定義されています。
出資を行ったベンチャーキャピタルや投資家が、企業の成長見込みを基に評価額を付けています。
日本人にとっては子どもにカードを持たせたり、家庭内でお金の教育をしていくことにまだ馴染みがないのが現状ですが、Greenlightは今の日本には無い特徴が挙げられます。
大きく分けて2つ。
一つはGreenlightは個人がお金と上手に付き合っていくための金融教育が行える点。
もう一つは、親が子どものお金を細かく管理できるというものです。
それぞれみていきましょう。
アプリを通じた金融教育
アメリカでは州ごとに違いはあるものの、主流となっている金融教育は「パーソナルファイナンス」と呼ばれる教育です。
パーソナルファイナンスは、文字通り個人や家庭のお金に関する管理・計画のことを指します。
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アメリカでは子どもにお金の教育をしていくことは当然という理解があり、自分のライフプランや理想の人生像を実現していくために、お金の管理・貯蓄・投資をしていくのです。
Greenlightアプリには、子ども向けに設計された金融教育コンテンツがあります。
お金が持つ機能、経済の流れ、金融知識、貯蓄や投資といった資産形成・運用まで、アプリを通じて親と子どもが一緒になって学べます。
これは、アプリ内で家事やお手伝いなどのタスクをアプリ内で割り当て、それをこなすことにより発生する報酬(お小遣い)子どものカードにチャージすることにより、働いてお金を得ることの大切さを学びます。
そして特徴的なのは、銀行が持つ機能を親子で擬似体験できるというものです。
お小遣いは限られた金額しかありません。その限られた金額でやりくりするために貯蓄目標を立てることは大切なことです。
貯蓄による金利は親が決めることができ、その金利は親のアカウントから子どものアカウントに渡すことができます。
そして、得たお小遣いや貯蓄によって増えた利息分は、親の管理もとで運用もすることができるのです。もちろん慈善団体に寄付をすることも可能です。
この他にも、「マーケットインデックスとは何か?」だったり、「賢い投資の仕方」など、2022年4月から日本の高校生が学ぶような内容を、子どもの頃から学ぶことができます。
親が子どものお金を細かく管理できる
2021年5月、米国大手投資信託運用会社のフィデリティ・インベストメンツが、13~17歳の子供向けに投資口座等の提供を開始しました。
実際に株取引などの投資を行うことができるのですが、これは親の監視のもとで可能になります。
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Greenlightも同様、アプリを通じて子どものお金について細かく親が管理できるようになっています。
子どもがカードを使って買い物をしたら、通知が親に即座に届くようなシステムになっていますし、支払い不可・振込・利用再開なども通知が届くようになっています。
また、キャッシュレス決済が当たり前になった世の中で、カードがあればいつでもどこでも買い物ができる今、親がカードが利用できるお店を限定したり使用限度額を決めることができるのも評判を呼んでいます。
ゆくゆくは、親と子ども共にお金に関する全ての情報を把握することができ、お金の賢い使い方、貯蓄や投資の重要性、信用力の重要性など、お金の面でも賢く健全に育てていくためのサービスを提供していくと発表しています。
まとめ
イギリスでは3歳から金融教育のフレームワークがあったりと、今はグローバルで若年層の金融教育が進んでいます。
米国大手の金融機関であるJPモルガンは、Greenlightと提携し子ども向けの銀行口座をスタートしました。
先述の米国大手投資信託運用会社のフィデリティ・インベストメンツのように、今グローバルで子ども向けの銀行口座が普及し始めています。
Greenlightがサービス開始した2017年、すぐにユーザー数1万人を突破し、現在は400万人以上の親子に愛用されています。
これは刻々と変化している社会情勢や経済動向により、一人ひとりが賢く健全にお金を向き合っていく必要性が顕になったからなのかもしれません。
日本ではやっと高校で金融教育が始まりますが、学校教育だけではなく家庭でも親子一緒になって教育していく姿勢は見習うべきなのでしょう。
いずれにせよ、金融教育や金融リテラシーとは、投資で勝てる能力ではないことは確かです。
お金の賢い使い方、貯蓄や投資の重要性、信用力の重要性など、お金の面でも賢く健全に育てていくため教育が金融教育と言えます。
それでは。