ドイツにおける「マイスター」教育制度から見える経済的自立と豊かな暮らし

近年では、アメリカや中国そして日本においても世界で注目されているこの「マイスター制度」から考えるキャリア、社会生活、経済的自立について触れたいと思います。

世界で注目されているマイスター制度

マイスター制度は、ドイツの長い歴史の中で育まれてきた制度です。
そして、マイスター制度では「世界が認めるスペシャリスト」を育てることに注力し作られた制度と認識することができます。

日本も世界的な評価として、ものづくり分野など様々な業種において高い技術や精度を示してきました。

ドイツも同じく、「ドイツ製品=高品質」といったイメージを持っている方も少なくありません。

その様な高い技術力を兼ね備えたスペシャリストを育成するプログラムがドイツでは確立されている中、世界中からはその道のプロになるために多くの人がドイツに足を運ぶ。

日本も例外ではなく、年々ドイツでの研修に参加する人が増えているのが現状です。

マイスターになる必須条件

「マイスター」とは国家資格「ゲゼレ」を取得しなければなりません。

さらなるキャリアアップや起業に向けて、各業種のプロフェッショナルの中でも師匠のような立場を目指すための資格を指します。

技術力の向上はもちろんのこと、商業的・ビジネス上の知識を習得し、後輩を育てる立場になることや、そのため技術力だけでなく経営学・教育学・開発力について学ぶことが必要となります。

国家資格(ゲゼレ)+4つの必要要素

国家資格(ゲゼレ)+4つの必要要素とは、

  • 後輩を育成する「教育力」
  • 社会を成長させる「経営力」
  • 高品質を生み出す「技術力」
  • 新たなものを生み出す「開発力」

*ゲレゼ
ゲゼレとは日本語でいう「職人」にあたり、見習い期間を経て、国が定めた試験に合格したその道のスペシャリスト

ゲゼレを取得するためには、義務教育を終えた後、約3年~3年半 の間、職業訓練(Ausbildung)をすることになります。

マイスターは主に2種類

「手工業マイスター」と「工業マイスター」があります。そちらをご紹介します。

手工業マイスター

製菓や製パン、ハム・ソーセージの食品加工、義肢装具や木工家具など。

工業マイスター

昔からある手工業に、産業革命や大量生産型によって機械化されたものとを組み込んだ形で発展してきた形態。

自動車整備士、産業機械工、電気設備工などがある。

その他

営業や販売業のプロを目指す「営業・販売系マイスター」というジャンルがある。

ドイツマイスター制度の枠組み

  • 手工業マイスター(一例)
    94業種(開業にマイスター資格が必要な業種は41)
    製パン / 食肉加工 / ビール醸造 / 整形靴 / 義肢装具 / 木工家具
  • 工業マイスター(一例)
    300 種類以上(企業に勤めることが多い)
    電気設備士 / 情報技術者 / 金属加工 / 自動車整備士/ 産業系商業職 / 産業機械工

引用:ドイツニュースダイジェスト

日本とドイツの教育の違い

日本においては、一律で中学までの義務教育がありある程度決められたルートで教育が進められていきます。

しかし、ドイツでは将来の選択肢を決めるにあたり一つ目の分岐点となるのが10歳になります。

日本人からすると、10歳で将来の進路を選ぶことや決定するとなると早いと感じる方が少なくないかと思います。

ですが、それこそがドイツ経済において大きな力を発揮し、個人としても自立した豊かな暮らしに繋がっているのではないかと考え流こともできます。

ドイツでは、300以上の職種においてスペシャリストを育成する仕組みとして、マイスター精度が確立されましたが、もちろん大学に進学する道や、職人・職業人のプロになる道ともに途中で選択を変えることもできます。

「教育制度の基本的な仕組み」について簡単に見ていきましょう。


引用:ドイツニュースダイジェスト

ドイツの学校教育制度の基本的な権限は各州にあり、その州によって制度が多少異なる場合があるがあります。

義務教育は9年(一部の州は10年)。①or②or③

①基本的には6歳から基礎学校に4年間(一部の州は6年間)通う
それから将来進む道を考慮してハウプトシューレ(5年制・卒業後職業学校、職業訓練を受ける)

②レアルシューレ(6年制・卒業後に職業学校、上級専門学校に進む)

③ギムナジウム(8年制・大学進学希望者)に進む。

日本と大きく違う点では、9歳の時点で大学に進むのか、あるいは職業訓練を受けるのかを決める点である。

そのほかには、早期選抜の問題を解決するべく設立された総合制学校がある。

これはハウプトシューレ、レアルシューレ、ギムナジウムの課程を残しつつ、児童の成長にともない発生する進路変更を受け入れように、各課程で態勢が整った協力型総合学校、または全生徒が共通の教科を履修し、進路の分岐点で次の課程に進むかどうかを決めていく統合型総合制学校がある。

また、ギムナジウムに進学した場合も途中で進路の変更や、大学を卒業したのちにゲゼレやマイスターを目指すことも可能。

逆にゲゼレやマイスター取得後にその知識の幅を広げるために大学(関連性のある学科)に行くことも可能である。

何十年も前に比べれば、大学に行く人が多くなったが、マイスターの地位は大学の学位卒業と同等とみなされるため、現在も手に職を付けるという考え方は根強い人気がある。

まとめ

ドイツでは、早い段階で教育に対して改革を起こしていますが世界ではこの「マイスター制度」により、将来安定的に社会生活を送ることへの武器として認められているとも言えます。

それは、ドイツでのマイスターの称号を受けるとEU諸国全域に有効とされているからです。

さらに、ドイツの手工会議所の責任者は平均生涯年収で比べると、大卒よりもマイスター(大学を卒業していない)の方が高いとも言われております。

幼い頃から、将来のキャリアに関して考え、行動する力を日本の教育の現場でもより考え実践することで、「就職活動で全てが決まる」という日本の文化的考えも和らげることができるのではないでしょうか。

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