11人に1人が1億円以上の資産を持つシンガポール金融

世界屈指の教育大国で知られるシンガポールでは、金融においても香港についで世界第3位の金融センターとしても有名な国です。

そんなシンガポールでは、なぜ多くの方が1億円以上の資産を築くことができるのか?

また、日本との違いについて触れたいと思います。

 

シンガポール

シンガポールは1965年8月9日、マレーシアから独立しました。

日本の敗戦後、ふたたびイギリスの支配を受けましたが、同じく旧イギリス領だったマレー半島やボルネオ島の地域と1963年に連邦国家を形成し、マレーシアとして独立しました。

シンガポールの人口は、約564万人です。それに対して、日本はシンガポールの約22倍の1億2600万人です。

シンガポールの公用語は、マレー語、中国語、タミル語、英語の4つとなります。

 

若年層から金融知識教育への取り組み

シンガポールでは、2019年から本格的に学校教育の中での金融教育が始動しました。

また金融先進国を始めとするいくつかの国では、学校、大学、高等教育機関で金融リテラシーに関するプログラムを義務化しています。

シンガポールが国民の金融リテラシー向上に真剣に取り組むにあたり、規制当局はこうしたライフスキルを学校や大学のカリキュラムに正式に導入する方法を検討すべきだ。と述べています。

2019年から、高等教育機関であるポリテクニックと技術教育機構(Institute of Technical Education)の1年生全員に、家計における予算の立て方や借金、貯蓄における複利の効果など、金融の基礎知識を学ぶ授業が義務付けられました。

また2年生と3年生の一部の学生を対象に保険や投資、中央積立年金制度CPF(Central Provident Fund)などの国の制度を理解してもらうための金融教育カリキュラムも、今後数年間で試験的に導入する予定とのことです。

教育の場で金融上の意思決定を行うために必要なスキルや知識を身につけることで、子供のころからお金の習慣を身につけることができるようになることが期待されています。

また、現代ではキャッシュレス化が進み、現金を見る機会が少なくなっている時代環境で育った次世代の子どもたちのお金の対する価値観や理解は、大人世代とは異なってくる可能性があります。

そのため、親自身が金融の知識を持ち、子供が将来、誤った意思決定をしないように導くことがますます重要な課題となってくることでしょう。

 

資産と税制の関係

約11人に1人が資産1億円以上を築くシンガポーに対し、約44人に1人の割合で1億円の資産を築く日本との違いは、一つに税制の違いを無視できないことが大きく存在します。

いくつかの例にて比較します。

所得税が最大22%

日本は税金大国と言われることもありますが、各国に比べ超累進課税の国です。つまり稼げば稼ぐほど高額な所得税が発生します。

所得が4,000万円以上なら最大で45%、さらに住民税の10%を加えると55%も収める必要があります。

高額納税者でよく取り上げられる芸能人やスポーツ選手は稼いでいるイメージがありますが、現実にはこれだけ多くの税金を払っているのです。

一方で、シンガポールは日本と同じく累進課税となっていますが、最大で22%です。さらに住民税はありません。

日本の半分以下の税金を収めればよいのでそれだけ支出が減らせると考えると資産を築きやすいと言えます。

 

法人税が17%

平成31年4月1日時点で日本の法人税率が23.2%です。

年々低くはなっていますが、シンガポールの法人税率は17%。

儲かっている企業ほどこの差は大きいため、シンガポールには世界中の大手企業からベンチャー企業まで数多くの会社が集まっています。またシンガポールは外国企業の誘致に積極的なため、新規法人設立の際には税金を優遇してくれる制度もあります。

 

相続税がない

日本はとにかく相続税が高い国です。
富裕層であるほど納税額は高く、課税額が5,000万円以上1億円以下でも30%となり6億円を超えると55%にもなります。
資産を受け取っても孫、ひ孫の代になるとかなりの金額を税金として収めることになります。

それに対してシンガポールでは相続税がありません。
特に富裕層にとってパートナーや子どもに充分な資産を残してあげられるのは大きな魅力でしょう。
相続するだけで税金として徴収される日本と比較して、日本人の多くが思い切ってシンガポールへの移住をしてしまうの想像がつきます。

 

キャピタルゲイン税がない

シンガポールが株式・不動産を取り扱う投資家やトレーダーに人気な理由がこれです。
シンガポールでは資産を売却した際の利益(キャピタルゲイン)に対して税金がかかりません。

日本では20.315%の税金が発生するため、売却益が大きいほどその差は広がります。同じことをやっているのに日本で行うと利益の2割が税金で徴収されるのに対し、シンガポールではキャピタルゲイン税がありません。

長く続ければ続けるほど税制面での恩恵に大きな差が出ることになります。

 

仕組みから築く資産構築

中央積立基金・C P F社会保証制度

中央積立基金(CPF)とはシンガポールの社会保障制度で、日本における年金や国民保険を指しています。

シンガポールで就業する人は加入を義務付けられており、この制度はシンガポール人が資産を築ける理由の1つとなっています。

C P Fとは「個人の積立方式」です。

働いている人が給料からお金を拠出し、強制的に積立を行います。

被雇用者が20%の負担、雇用者が17%の負担となり給料の37%が積立にまわされます。

その積立てたお金で老後の生活や医療を受けるのがシンガポールのCPF制度です。

それに対し、日本の年金制度は「賦課方式」となっています。現在働いている人々が毎月年金基金などに保険料を収め、その資金源から退職者に再分配が行われます。

日本は退職者、つまり原則65歳以上の年金受給者のために毎月給料から年金と保険料を天引きされているのに対し、シンガポールでは個人で貯めたお金を元に老後の生活を送っているのです。

このように制度の中身の違いによって、将来の備えも大きく変わります。

 

就業におけるリスクと考え方

日本では失業をした場合、雇用保険に加入していれば失業手当が受けられます。しかしシンガポールではそのような制度はありません。

失業手当などはありませんが、シンガポール人は強制的に給与の約4割を積立していますので、嫌でもお金は貯まっていきます。

また個人で積立を行っているため、年金をただ受け取る日本人と比べて当事者意識が違います。

家族の面倒も国が見てくれるわけではないので両親や親族とも助け合いながら生活しています。このような背景や考え方によりシンガポール人は資産を築きやすいと言えます。

 

資産を無理なく築く仕組み・高効率複利

シンガポールでは、冒頭で教育カリキュラムで金融教育に力が入れられているとありましたが、まさに子供のうちから人的資本と金融資本について学んでいるので、C P F制度の他にお金の働きによって様々な選択肢を持つことを学びます。

そして、制度への理解や資産を築くスキル(自助努力)によって大きな資産を築くことに繋がることも必然です。

ここでは、シンガポールの方々が資産を築ける最もな理由を制度と共に見ていきます。

 

CPF口座は利息が優秀

  1. 投資・住宅購入・教育費
  2. 医療保険・入院費
  3. 老後の年金

C P Fは給料から積み立てられたお金がこれら3つの口座にそれぞれ振り分けられます。この口座の利息は約3.5~5%です。

しかも複利で運用していくため資産は雪だるま式に増加します。日本の銀行では普通預金0.001%、定期預金0.04%程となりますので、それに比べるともちろん、はるかに優れた利率です。

またCPF投資制度という口座の資金を政府が許可する株式や債券に投資できる制度もあります。

(例)
給与30万円×30%(90,000円)×12ヶ月×40年=4320万円
4320万円が複利運用平均4%になると約1億600万円となります。

このように、資産1億円への道筋が立つのも約11人に1人が1億円以上の資産を持つ理由と言えます。

また、シンガポール人はCPF口座だけではなく個人での投資も積極的に行っています。株式だけでなく不動産オーナーになる人も数多くおり、日本人と比較しても圧倒的に金融リテラシーが高いです。

環境が育んだとも言えそうですが、国全体が「自助努力」の精神であるため、自然と資産を作る能力が高まる傾向にあります。

 

まとめ

今回は、約11人に1人が資産1億円以上を持つとされるシンガポール金融について考え方や制度をご紹介しました。

日本においても、2022年4月より高校課程から資産形成の授業が義務教育に導入されます。

金融先進国では、お金について早い段階から学ぶことによって一人一人の社会生活における選択肢を広げる目的や、近年のデジタル社会において若者の金融詐欺対策も示唆されております。

国の違いや、文化の違いを知りお金について考えることは、今後の近代社会を生き抜き、幸福度を向上させるためにも最も必要なこになるでしょう。

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