中学生は社会を「地理・歴史・公民」の3分野に分けて学びます。その中で公民は中学3年生から学び、「政治・経済・国際関係」の3つを主に学びます。
さらにその3つ中から「経済の分野」において、「円安・円高」を学ぶことになります。
実はこの円安と円高。大人でも分かっていない方は少なくありません。なぜなら円安・円高を意識しなくても、知らないうちに誰かの恩恵に預かりながら現状は生活ができているからですね。
日本は輸入・輸出ともに世界第5位の貿易大国です。円安・円高を理解していないままだと、経済の流れや仕組みが分からないだけではなく、今当たり前になっている資産形成や運用、投資においても何も対策が取れない状態になってしまいます。
そうならないためにも、中学公民で学ぶ円安・円高はこれから生きていく上で必ず理解しておきたい知識なのです。
さっそく「円安・円高」について見ていきましょう。
円安・円高とは、円を中心に見た相場の変動
「今日の14時時点の円相場は、前日17時時点に比べ4銭の円安・ドル高の1ドル=115円91~92銭で推移しています•••。」
こちらは、ニュースなどでよく聞くお馴染みのフレーズですね。これは円とドルの相場を表しています。
世界の通貨は「円」だけではありません。米ドル、ユーロの他にもたくさんあります。
世界は円だけ流通しているわけではないので、1ドルに対して円はいくらか?100円に対してドルはいくらか?を決めて取引する必要があるのです。これを為替と言います。
ですが、Aさんは1ドル=100円、一方でBさんは1ドル=200円を提示してきたら、世界経済は混乱してしまいます。そこで混乱しないために外国為替市場というところが相場を提示しているのです。
その相場というのが、冒頭でお話ししたよく聞くフレーズ「「今日の14時時点の円相場は〜」なのです。
そしてこの相場は国の経済状況によって常に変動をしています。円安・円高の相場が与える影響は、海外旅行や観光、輸出入や私たちが普段何気なく利用しているモノやサービスなど、広く影響してきます。
円安・円高とは
円安・円高とは、円を中心に見た相場の変動だとお伝えしました。次に円安・円高とはどういう状態なのかを解説します。
日本で円安・円高と聞くと、一般的に対米ドルを指します。なぜなら円とドルは相対的に動くため、円が下がればドルは高くなり、ドルが下がれば円は高くなります。
(余談ですが、世界三大通貨は「米ドル・ユーロ・円」、通貨ペアの取引量は、ユーロ/米ドル(28%)、米ドル/円(14%)、ポンド/米ドル(9%)の順になっています。)
現在、ドル円相場は1ドル=115円前後で推移していますが、ここでは分かりやすく「1ドル=100円」を基準に考えます。
円安とは
1ドル=100円→1ドル=200円になった場合。
1ドル=100円の時に1万円をドルに替えた場合、100ドルになります。
これが1ドル=200円になると、50ドルになります。
100円の時より、少ないドルしか得られませんね。これが円安です。
反対に1ドル=100円の時に100ドルを円に替えると、1万円になります。
1ドル=200円になると、2万円になります。
100円の時より、多い円を得られるのでドル高になります。
ドルを中心で見ると、1ドル=100円だったのが200円に上がっているので、ドルが高くなっています。
「200円に上がってるので円も高くなってる」と思ってしまいますが、円を中心に見ると下がっているんですね。
円を中心に見てみましょう。
1ドル=100セント。100セント(1ドル)=100円。1円=1セントです。
100セント(1ドル)が200円になると、「100÷200=0.5セント」になります。
つまり、「1円=1セント」から、「1円=0.5セント」に下がったことになりますので、円安になります。
円高とは
1ドル=100円→1ドル=50円になった場合。
1ドル=100円の時に1万円をドルに替えた場合、100ドルになります。
これが1ドル=50円になると、200ドルになります。
100円の時より、多くドルを得られます。これが円高です。
反対に1ドル=100円の時に100ドルを円に替えると、1万円になります。
1ドル=50円になると、5,000円になります。
100円の時より、得られる円が少ないのでドル安になります。
ドルを中心で見ると、1ドル=100円だったのが50円に上がっているので、ドルが安くなっています。
「50円に下がってるので円も下がってる」と思ってしまいますが、円を中心に見ると上がっているんですね。
円を中心に見てみましょう。
1ドル=100セント。100セント(1ドル)=100円。1円=1セントです。
100セント(1ドル)が50円になると、「100÷50=2セント」になります。
つまり、「1円=1セント」から、「1円=2セント」に上がったことになりますので、円高になります。
円安・円高による輸出入の影響
日本は輸入・輸出ともに世界第5位の貿易大国。モノづくり大国と知られている日本は、「Made in Japan」が信頼を集めています。
日本で作ったモノを他国に輸出する際、他国から日本へモノを輸入する際は、円安・円高による影響を強く受けます。
この影響は、日本の経済や私たちの生活にも結びつきます。円安・円高による輸出入の影響について少しみていきましょう。
円安による輸出入の影響
一般的に円安の場合、輸入には不利で、輸出には有利になります。
「1ドル=100円」が「1ドル=120円」のような円安になると、輸入する場合は100円の時よりコストが高くなりデメリットとなり、輸出する場合は売上が上がります。
例えば、車を1万ドルで輸出したとします。
「1ドル=100円」の時は100万円、「1ドル=120円」の時は120万円、といったように、円安の方が20万円多く円を得られます。反対に輸入する場合は、20万円多く払う必要があるのでデメリットになるのです。
輸出産業は売上が上がるので活性化し、従業員の給料も上がりやすく、設備投資なども促進され、景気はよくなります。
一方、輸入製品や輸入原材料などは、日本に持ってくるまでのコストが上がっているので値段が上がり、国内物価が上がりインフレ傾向になります。
円高による輸出入の影響
一般的に円高の場合、輸入には有利で、輸出には不利になります。
「1ドル=100円」が「1ドル=80円」のような円高になると、輸入する場合は100円の時よりコストが安くなるのでメリットとなり、輸出する場合は売上が下がります。
例えば、車を1万ドルで輸入したとします。
「1ドル=100円」の時は100万円、「1ドル=80円」の時は80万円、といったように、円高の方が20万円少ないコストで車を輸入でき、安い値段で売ることができます。反対に輸出する場合は、海外での値段が高くなるのであまり売れなくなります。
円高になると、輸出品目の値段が海外では高くなり、あまり売れなくなります。そうなると輸出が減少し輸出産業が衰退します。
一方で、輸入製品や輸入原材料などは、日本において安く売ることができますが、国内の物価が下がりデフレ傾向になります。
どちらが良いか悪いか
一概には言えない
円安・円高による輸出入の影響は、どちらが良くてどちらが悪いというわけではありません。
ある自動車メーカーは、1円円安になるだけで数百億円の利益が出ると言われています。それだけ輸出が多いということなのですが、自動車メーカーひとつをとっても、関連企業や下請け企業がたくさん存在し、またそこで働く人もたくさんいます。
そうした中で、円安に振れることは関連各所の至る所まで波及効果が期待でき、そこで働く人たちの給料が上がれば消費も増え、税収も上がるといった経済効果が期待できるのです。また、円安になると外国人観光客が増えて国内の消費がさらに増えます。
一方で、毎日の生活において輸入品目に頼っている部分に関しては、円安より円高の方が望ましいと言えます。
このように、どちらもメリット・デメリットがあるので、一概には言えないのです。
ただ、どちらかに急激に振れることはよろしくないので、日頃から動向をチェックをしておくと、どのように経済が動いているかが分かりますので、注目していきましょう。
まとめ
ここまで円安・円高について解説してきました。
「1ドル=100円が120円に上がっているのに、なんで円安なの?」とこんがらがってしまうことも少なくありません。
最近は物価上昇のニュースもよく見かけるようになりました。ガソリンも高くなっていますし、スーパーに行ってもチラホラ高くなってるものがありますよね。
物価の上昇は様々な要因がありますが、子供と一緒に買い物に行く時があれば、「円安だから高くなってるね。」などとコミュニケーションを取ってみてください。
学校で学んだことがそのまま実生活に反映され、理解が早くなります。まだ学校で習う前でしたら、好奇心をくすぐってあげると良いお金の教育になります。
そして、もし子供から「なんで円安だと高くなるの?」と聞かれたときは、中途半端に流すのではなく、しっかり理由を教えてあげるのことがとても大切です。
参考になれば幸いです。
それでは。